ユミアのアトリエ

※掌話

ユミアとヴィクトル(フォン・デューラー兄妹)の出会いから

・君の瞳

アラディス調査団において“彼女”の存在はひと際異質を放っていた。

錬金術自体が禁忌であるという認識をこの大陸では植え付けられているのだから当然ではある。

その当然を変えていきたいという固い決意の元、ユミアは調査団に加わり。

自分の宛がわれた範囲から飛び出して隊長の元に息を切らせながら、それでいて真っ直ぐに決めたんです!と真っ向から向き合っている。

監視役としてヴィクトルとアイラが付くことになったのはそうした何度目かのやり取りの後だった。

“錬金術がどういったものか知っているかね”

禁忌だろうと教えられて来たことを答えるのは簡単であり、楽だ。

ただそれは正解では、ない。騎士としての自分から見ても正しいとも言えない。

具体的に分かっている訳ではありませんとその旨を隊長へ伝えると。

兄妹が他の調査団のメンバーと違い、偏見がそれほどないのだと見抜いていたのだろう。

彼女を頼むと任務を託された。

お兄ちゃん固すぎ~とアイラは同年代の友だちが出来そうで嬉しいなとユミアに臆することなく近づいていく。

任務を引き受ける前にアメジストの様な輝きを放つ君の瞳を真正面から見つめた。

ここに来た意味は自身と彼女は全く異なる。

それでも、揺るぎなく貫こうとする覚悟を受け取った。

「戦い方は…特に問題はないようだな。

蹴りも得意なのか。アイラは見ての通り槍の使い手だ。

僕は戦況をしっかりと見極め、盾として守りを固めよう」

「はい、よろしくお願いいたします!」

「そうかしこまらなくて良いよ。友だちなんだから」

「…ありがとう」

彼女が見つけたものからやってみたいことがあると監視役としてその後に付いて行く。

「おふたりはごきょうだいなんですね」

ひとりだから何だか羨ましいです。

ふたりで顔を見合わせ、これからはしばらく行動を共にすると改めて告げた。

「心強いです。錬金術士だと話して。変に思われなかったの、隊長さんを除けばおふたりが初めてですから」

「…見極める為にここにいるんだ」

「お兄ちゃん、だからそんなに固くならなくても~。ユミア、大丈夫だよ。

思いっきり色んなことやってこう!手伝うよ」

青空と風が吹きちぎれていく白い雲。

黒い髪とアメジストのような瞳。

まだ、わだかまりを抱きつつも君の瞳から伝わって来たその決意を心に留めながら3人で歩み進んで行く。