らくがき語りに置いてあるKawaiiのジルちゃんから思いついたちょっとした小ネタ。

・SQKawaiiのジャケットアートのジルちゃんにて。

ミニマムと呼ばれる小さくなる魔法は16の世界には登場していないのですが、いちおう今回の小ネタで使わせてもらっています。これは小ネタには収納しない方向で。

兄と弟、ロズフィールド兄弟は凄まじい勢いで本の頁をめくっている。
彼らにとって大切な幼なじみであるジル・ワーリックが本人も少し困った様子で小首を傾げてふたりのやりとりを見送っていたーダルメキア共和国ダリミルの市場でたまたま寄った行商人から古びたある本を空の時代について何か分かるかも知れないと買い取ったのだが、次の任務に3人で出て行くことになりそのまま図書館に置き去りにしていたのだ。読み書きを覚え計算も出来るようになった子どもたちは好奇心旺盛でもあり。新しく手に入った本に興味を向けるのは自然のことで。
戻ったばかりの3者に見て見てこれはたぶん昔の魔法だよと試しに出来るかな唱えてみたものだから。
どうやら属性は関係なく無属性であり、物を小さく出来る誰にでも扱える魔法だったらしい。大慌てでクライヴの私室に備えられたデスクの上に彼女を優しく避難させてから現在に至る。
ジョシュア「…読み返しても解除の魔法は出て来ないね」
クライヴ「小さくしてそのままにしていたとも思えないのだが」
ジョシュア「考えられるのは…同じ魔法を唱えて元に戻した、だろうね」
クライヴ「何か…小さくしても困らないものでまずは試してからだな」
ジョシュア「兄さんが今使っていない武器はどうかな」
小さくなった彼女が武器をすっと取り出したりして、特に支障はないと教えてくれたのだ。
クライヴ「そうだな。早速ー」
ジョシュア「僕が取りに行くよ。ここに誰か来る時はまず兄さんに用があるしね」
弟に任せ、ジル大丈夫だ。これが上手くいけばすぐに戻れると彼が話しかけると彼女もええ。としっかり頷いてまたすらりとレイピアを抜いて構える体勢を取り始めた。
ジル「この姿でも剣も魔法も使えるのね…」
クライヴ「危険が更に増すだけだろう」
ジル「…相手が、そう、眠りについているのなら…物音を立てることも無く近づいて首に…」
クライヴ「ジル」
鉄王国にてずっと兵器であり汚れ役として酷使され。そして空の文明時代事実魔法が兵器と戦争の為に用いられて来た人間の業を知ったばかりの彼女の言葉を遮る。確かに理の意図とは全く異なる歩み方をしてきたのが空の文明時代の人間であり。
そして、ヴァリスゼアの人々は今なお真実から目を背けベアラーとドミナント、そして自分自身のことすら向き合っていなかった。クリスタルに縋ったままずっと、ずっと。
クライヴはデスクの上で掌を差し伸べジルを招く。
彼女はすっとそこに腰をかけた。
クライヴ「俺が知っている君のその構え方は…いつだって俺を守ろうと、そしてシドの前でふたりで誓い貫こうと抗った証だ」
小さな彼女が顔を上げて頷いてくれた。
ジル「魔法も、マザークリスタルも人を幸せにはしていない…その考えは今も変わっていないわ」
彼も頷いた。
クライヴ「けれど、君が何に用いるようになったかは…変わった。その想いが俺の中にちゃんとある」
少女だった頃から変わったとそう再会してから間もないフェニックスゲートにて君は言った。兵器でしかなかった血塗られた過去。心を押し殺していたシヴァのドミナント。
そこから、また因縁を断ち変わろうと抗っていた。凛として背筋を伸ばし立ち振る舞いひとつひとつに美しささえ携えて。
そうした姿を隣で立ちながら共に歩み。そして涙を流しながら吐露してくれた想いを支えると決め。
心を震わせて人として喜びの涙を流し笑顔を見せるようになってからは愛おしいと小さな彼女を眺めながらも思うのだ。
小さい頃から思っていたことだったが…。首をこくんと傾げている小さな彼女も。
クライヴ「可愛いな」
ジル「え…」
クライヴ「あ、いや…つい…」
誤魔化すことも出来ないので何か続けようかと言葉を発しようとすると頭の後ろを本の角に軽くあてられた。

ジョシュア「兄さん。気持ちは分かるけどいつまでもこうしていられないよ」

結局考えていた通り同じ魔法を唱えれば元に戻れたのでそれほど他の為すべき事柄に支障は出なかった訳だが。
クライヴに可愛いと言ってもらえたジルはしばらく上機嫌でインビンシブルに戻り休憩している間はあれこれ針子を楽しそうに勤しんでいたとか。